VR関連のセッションが数多く開催され,そこに集まる人も多かったGDC 2016。だが,その盛り上がりは北米の事情を反映していたというのもまた事実だ。例えばHTCとValveが共同開発するVR対応ヘッドマウントディスプレイ「Vive」は,ある程度までプレイヤーが自由に動き回れる「ルームスケールVR」を魅力として謳っているが,これはKinectと同じく,体験としては素晴らしいものの,日本の(特にゲーマーの)住環境にフィットしているとは言いがたい。無論,そういう作品がVRのすべてではないが。
テイルズウィーバー RMT
一方で,アメリカ以外の地域におけるVR技術の盛り上がりも,着実に進行している。そして,北米とは違った形でVRが浸透しつつある地域として,中国を無視することはできない。中国ではスマートフォンを利用する「モバイルVR」が主流なのだ。
ということで,中国におけるVRの盛り上がり方が解説されたセッション「VR STATUS IN CHINA」の模様をお届けしよう。登壇したのは,ゲームエンジン「Cocos2d-x」で知られるChukong TechnologiesのViivi Li氏だ。
※Viivi Li氏, General Manager of Overseas Publishing, Chukong Technologies ■中国のVR市場はモバイルが牽引
2015年段階で,中国で販売されたモバイルVR機器(「Gear VR」や「Google Cardboard」のような,スマートフォンを利用するVR機器)は70万台。一方でPC向けVR機器や一体型VR機器は1万台という数字になっている。ユーザー数としては,前者が45万人,後者が3万人という,少々寂しい数字だ。
事実Li氏は「中国においても,VRは普及しているとは言いがたい」と断言するが,その一方で,無料ゲームのダウンロードやショッピングモールでの体験会などを通じ,ユーザー数は増大傾向にあるとも指摘する。
それでもハイエンドVRはしばらく苦戦が続く見込みで,写真に示したやけに景気のいいグラフ(iResearch社による調査結果)でも,PCの利用を前提としたハイエンドVRの本格的な普及は2019年を待つ必要があるとされている。
これは市場規模に関しても同様で,iMediaの調査によると2015年の規模は2.1億ドルと,大きなビジネスとして成立しているとは言いがたい。2016年には4倍の8.7億ドルが期待されており,ここから先は急激な成長が予測されているが……。
いずれにしても言えるのは,VR技術をベースにした市場は,中国においてもこれから発展していくところであり,またそこに高い期待も寄せられているということだ。 ■急激に進むモバイルVRの断片化
さて,中国のVR市場には,ひとつの顕著な特徴がある。それは,ハードウェアメーカーの参入が,ほかの地域より圧倒的に多いということだ。
特にモバイルVRにおいては百花繚乱という状況で,ミドルレンジからハイエンドVRのデバイスも,多彩なラインナップとなっている。